「ザ・ファブル」を読んだのは、確か友人に「これ絶対好きだから」と押しつけられたのがきっかけだった。
正直、最初は半信半疑だった。殺し屋もの、というジャンル自体はそんなに好きではなかった。でも第1話を読んで、すぐわかった。これは殺し屋マンガではない。これは、最強すぎる男が普通に生きようとするコメディだ。
映画も観た。1作目も2作目も。岡田准一がファブルを演じていると知ったとき「ああ、これは本物になる」と思ったが、実際その通りだった。アクションの完成度が異常だった。
基本情報
| タイトル | ザ・ファブル |
| 作者 | 南勝久 |
| 連載誌 | 週刊ヤングマガジン(講談社) |
| 連載期間 | 2014年〜2019年(第一部・全22巻) 2020年〜(第二部「The second contact」) |
| ジャンル | アクション・コメディ |
| 映画 | 2019年・2021年(岡田准一主演) |
あらすじ
主人公は「ファブル」と呼ばれる伝説の殺し屋。依頼通りの相手を確実に仕留める超人的な腕を持ち、裏社会では「存在するだけで人が死ぬ」と恐れられている。
そのファブルが、ボスから突然命じられる。「1年間、一般人として大阪で暮らせ。ただし、絶対に人を殺すな」。
佐藤アキラという偽名で、相棒の女性(佐藤ヨウコ、偽名)と兄妹として暮らし始める。グラフィックデザイナーを目指すという設定で就職し、普通の日常に溶け込もうとするが——ファブルには「普通」の感覚が根本的にない。
殺し屋として生きてきたが故の、常識とのズレ。それが生み出す爆笑の日常と、時折顔を出す「本物の危険」が絡み合う、唯一無二のアクション+コメディ。
ここが最高① コメディの精度が異常に高い
ファブルはとにかく「普通がわからない」。飲み会の場でタコを見て本気で喜ぶシーンとか、ゲームセンターで無双するシーンとか、笑いが「状況のズレ」から来るので品がある。
下品な笑いが一切ない。それでいてどこか爆発的におかしい。このバランスが南勝久の作家としての力だと思う。40代男性が安心して読めるコメディだ。
ここが最高② アクションが本気すぎる
コメディとして読んでいると、時々ファブルが本気を出す場面がある。このギャップが凄まじい。それまで日常系の柔らかいタッチで描かれていたのに、戦闘シーンになった瞬間に絵の密度が変わる。
しかも「超人的な強さ」をリアリティのある格闘技ベースで描いているのが良い。派手なエフェクトや特殊能力ではなく、スピードと判断力と技術の組み合わせで「最強」を表現している。
ここが最高③ 脇役が全員立っている
ファブルが面白いのはファブルだけではない。ヨウコ(偽妹)のキャラも絶妙だし、ヤクザの親分、就職先の上司、近所の子ども、全員に独自の存在感がある。
特にボスとファブルの関係性が好きだった。師弟でも友人でもない、でも確かな信頼がある。この関係を描く筆致が、この作者は本当にうまい。
映画版について:岡田准一の本気を見た
2019年公開の1作目、2021年公開の「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」、どちらも観た。率直に言って、アクション映画として近年のトップレベルだと思う。
岡田准一がV6解散後の活動として本格的にアクションへ振り切ったのは有名だが、このファブルで見せる格闘シーンは本物の格闘技者が動いているレベルだ。スタントなし、ワイヤーなし、CGなし——とは言い過ぎかもしれないが、それに近い体感がある。
2作目では「人を殺さずに敵をどうするか」というテーマが前面に出て、アクションの制約が逆に創造性を引き出していた。映画オリジナルの展開もあるが、原作ファンが怒るような改変はない。
DMMブックスで読む
全22巻(第一部)+現在も継続中の第二部は、DMMブックスで配信されている。初回利用なら70%OFFクーポンが使えるので、まず1〜3巻あたりを試してみるのがいい。3巻まで読めばほぼ全員ハマる構成になっている。
⑤ 知恵と工夫、プロ意識は現代社会人にも刺さる
ファブルはただの「強いやつがすごい」マンガではない。彼が徹底しているのは、状況を正確に読み、最小限の動きで最大の結果を出すというプロとしての思考だ。
「どうすれば相手の裏をかけるか」「この状況で自分が使えるリソースは何か」——読んでいると、ファブルの判断プロセスがやたら仕事に使えそうで困る。殺し屋の技術論なのに、ビジネスの場でも通用しそうな知恵の塔だ。
一般人として生きることになっても、プロとして培った観察眼・準備・判断力は一切ブレない。そのプロ意識の高さは、現代の社会人が思わず背筋を正したくなるほどだ。「手を抜かない」「言い訳しない」「できないことを安請け合いしない」——こういった仕事への姿勤が、コメディの笑いの裏に自然と描かれている。
まとめ|「漫画ってこういうもんだよな」と思い出させてくれる作品
ザ・ファブルを読んで感じるのは、「マンガってこんなに豊かな表現ができるんだ」という感覚だ。コメディでもあり、アクションでもあり、人間ドラマでもある。そのどれかに偏ることなく、全部が高水準で成立している。
40代になってマンガを読む時間が限られてきた中で、「この22巻を読む価値があるか」と聞かれれば、迷わず「ある」と答える。映画も含めて、これだけ完成度の高いコンテンツはなかなかない。
まだ読んでいないなら、今すぐ1巻を手に取ってほしい。